【ユニリーバ×北海道下川町】地域でのリモートワークが圧倒的におすすめな理由とは?

パープル

written by 川西里奈

もしも明日から、好きな場所で仕事をして良いと言われたらどこへ行きますか?さまざまな業種で、リモートワークが可能となってきている今、“仕事をする場所”の選択肢も増えています。

ユニリーバ・ジャパンでは、ダイバーシティ(多様性)の推進を重要な経営戦略の一つとしており、申請すれば理由を問わず、会社以外の場所で勤務することができる「※WAA」(Work from Anywhere and Anytime)を導入しています。

同社の島田由香さんは、このWAAという制度を利用して北海道旭川市のさらに北にある『下川町』で3日間のリモートワークを体験されました。今回は、島田さんが下川町で一体どんな体験をされたのか、また地域でのリモートワークについてお話を伺いました。

※WAA…平日の6時~21時の間で自由に勤務地、勤務時間、休憩時間を決められる。工場および一部営業を除く全社員が対象で、期間や日数の制限はない。ただし、1日の標準労働時間は7時間35分、1ヶ月の標準勤務時間=標準労働時間×所定労働日数とする。

島田由香(しまだ ゆか)

島田由香(しまだ ゆか)

ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社 取締役人事総務本部長。学生時代からモチベーションに関心を持ち、キャリアは一貫して人・組織にかかわる。日本の人事部HRアワード2016 個人の部・最優秀賞受賞。

“静か過ぎてうるさい”下川町は日本のアラスカ!?

数ある地域の中でなぜ、下川町にリモートワークに行くことにしたのですか?

島田:WAA(work from Anywhere and Anytime)を導入して1年程経った頃、取り組みの中でも特に“Anywhere”を徹底することが地域活性にも繋がるのではないかという観点から、いつでも働ける場所を各地に作りたいと考えていました。

そんなときに、CSRコンサルティングをされている株式会社クレアンの方から下川町の紹介を受けました。下川町は、※SDGs未来都市に選ばれていて、かなり前からエネルギー問題などの取り組みにチャレンジし続けておられるということ、またサテライトオフィス誘致や企業連携にも積極的な町だと聞いていたので、行ってみたいと思いました。

※SDGs未来都市…自治体によるSDGsの達成に向けた優れた取組を提案する29都市。

でも、人口は3,400人、冬はマイナス30℃という下川町。リモートワークをする土地としては少しハードルが高いように感じませんでしたか?

島田:そうですね。東京から旭川に飛ぶのに1時間半。そこからまた車で2時間弱。たしかに距離のことだけでもハードルは高いです。でも何事も、まずは試してみるものですよ。「遠い」とか「お金がかかる」と行かない理由を探してしまいがちですが、行く理由、行きたいと思う理由はそれ以上にあると思います。リスクを考えることも大事ですが、私はそこから広がっていく可能性のほうに目が行ってしまうんですよね。

▲「行かない理由よりも、行きたい理由を考えると可能性は広がります。」島田さん

実際に行ってみて、下川町はどんなところでしたか?

島田:まず、時の流れが違います。

なぜそう感じるのでしょうか?

島田:そう感じるひとつは、“音”ですね。私は留学していたときに、ニューヨークからアラスカを一人旅して帰ってきたんですが、アラスカへ行ったとき、“音が無くてうるさい”つまり静けさの音を体感しました。音がなさ過ぎて「キーン」という音がするんです。都会にいると音がしないことってないですよね。でも下川町では、アラスカでの体験に近しいものがありますね。

日本で“アラスカ”を体験できるのは、下川町だけかもしれませんね!

薪割りや草刈りから学ぶ人生の極意

下川町ではどんな生活をされていたのでしょうか。

島田:普段の業務以外の時間は地域のことをします。現地では、下川町の課題をいっしょに解決するというミッションがあり、その代わりに「コモレビ」というコミュニティーセンターを無料で貸していただけました。宿泊は「ヨックル」という一軒家が9棟並んで建っているうちの1棟を借りたので、そこで仕事をしたりすることもできます。

▲家族でも宿泊可能なほど、中も広々としている『ヨックル』

どういった課題に取り込んだのですか?

島田:下川町の場合は、労働力の提供や、現地の起業家のサポートなどです。市や町、企業やNPOが抱えている課題解決について協力するという感じです。期間や内容は基本的に何でもOKなので、事前に課題を出していただいて、こちらとのマッチングを計りながら、内容を詰めて行きます。この、“マッチングを計る”というのがむずかしいので、現地にも窓口になってくださる方がいるのが、このプロジェクトの成功の鍵だと思います。

現地での忘れられない体験はありますか?

島田:労働力が足りないということで、薪割りを手伝ったりもしたのですが、これは想像以上にマインドフルな体験でした。恐れがあると力を振り絞れなくて、薪がうまく割れないんです。こういうことは仕事にも通じるものがあると思うんですよね。草刈りでも、雑草は少しの隙間があればどこでも伸びていける、本来人間もそうだなと感じます。思い込みや恥ずかしいという気持ちがあるから、伸びていくことをやめているのかもしれないな、などとさまざまな気づきがありました。

▲『薪割り』も都会ではなかなかできない貴重な体験

それは東京にいたらなかなか得られない感覚ですね!

島田:そうですね、実際に自然から身体を通して体験することは学びの深さが全然違うと思います。色んな地域でリモートワークを経験しましたが、下川町は、食べ物や温泉も素晴らしいですし、また行きたい地域ランキング1位です。

仕事場を“自分で選べる”ということ

WAAという制度についてお伺いしたいのですが、基本的にはどこで仕事をしてもOKなのですか?

島田:自宅やカフェ、図書館でも本当にどこでも良いです。ただ、機密性の確保と安全確認という観点から、上司に業務内容と居場所を報告するのは義務になっています。

WAAを導入して社内に何か変化はありましたか?

島田:選択肢が広がったことから、社員ひとりひとりが、自分で選ぶということに幸せを感じるようになっていったと感じます。オフィスに行って働くときも、何をするのか、何のためにオフィスに行くのか理由を考えて、自分で選択するようになります。それによって効率があがったという社員からの声もあります。

▲「選択肢が広がると、“選ぶ”ことに幸せを感じられるようになります。」島田さん

でも、かなり自由度の高い制度ですよね。マネジメントの観点から、不安はないでしょうか。

島田:「信頼して任せて委ねる」それで万が一何か問題が起これば、注意すればいいし是正すればいいだけです。ルールを作ると、それを守らせることや管理することに必死になってしまっていくことが多いと思います。でも、やる前から「うまくいかなかったら大変だ」というのは考え過ぎだと感じます。なので、この制度を効果的に利用できるかどうかは、マネージャーがチームのメンバーを信頼できるかどうかで変わってきます。

大自然をワークスタイルに取り入れる

リモートワークをするなら都心か地域どちらが良いと思われますか?

島田:圧倒的に地域ですね。人間は自然の一部であって、自然との繋がりは人間にとって必要不可欠です。本来からそこにある山、海といった、もともとある自然に触れることで得られるエネルギーは本当に大きなものです。

それによって仕事のモチベーションにもあがるということですか?

島田:人間は仕事をしているときも五感で自然を感じています。緑が視野の中に10%以上あるかないかで、集中力、リラクゼーション、パフォーマンスにどういった影響があるのかリサーチもされています。

▲エッセンシャルオイルづくりの体験では、植物の香りに癒やされる。

地域に行けば10%どころの自然ではないですね。

島田:みんな休日になるとパワースポットに赴いたり、紅葉を見に行ったりしますよね。それをもっと日々の生活に取り入れることが大事です。知らないところに行くことや、知らない人と会うこと、いつも見ないようなものを見ることが刺激になり「この体験があの体験と似ているかも!」というひらめきになって、仕事が捗るんですよね。

今後は、働き方についてどのような取り組みをしていきたいですか?

島田:もっと「こんな働き方していいんだ!」と社員に感じてもらえるようにしていきたいですね。仕事は人生とは切り離せないので、人生をどうしたいかを考えて行動に移していけるような環境を作っていきたいです。リモートワークについても地域と都心、両方に拠点を持って行き来しながら、その過程で家を借りたりするのも良いと思います。移住となるとハードルが高いですが、そうやって短期でいろんなところに行く中で「なんかここ良いな」と感じる場所に出会えるのが理想だなと思います。

取材を終えて

「旭川での移動中、6匹のキタキツネと遭遇した」なんてエピソードも飛び出し頭の中はすっかり下川町にトリップしていました。大自然に囲まれた中で仕事をしていると、今まで自分にはなかったひらめきが湧いてくるのも頷けます。いつでもどこでも仕事ができるようになった今、私たちの選択肢は北海道の大地のように無限に広がっているのだと実感しました。

この記事をシェアしよう!

  • hatena