若者のキャリアを見据えた組織改革で地域に根づいた「イエ」作り!
written by 伊藤愛結
神馬 充匡さん
有限会社神馬建設の3代目代表。
北海道浦河郡出身。
Rising Sun Rockは毎年欠かさず参戦するほどのフェス好き。
北海道の会社から10年東京に出張していた時は千葉市に住んでおり、幕張メッセも近く「(フェス好きの僕には)良い場所だった。」とのこと。
北海道でのおススメは「地元の浦河郡」。
冬は1日中雪かきする必要のない雪が降り、夏は涼しい地域。
「とても北海道らしい土地なので、ぜひ遊びに来てください!」とのことでした!
地域に根付いた「イエ」づくりを誰よりも大切にする有限会社神馬建設さん。
最近ではより良い「イエ」作りに向けて、工務店の教育体制を整えているんだとか!
本日は神馬建設の3代目神馬社長に、工務店を変えて行こうと思ったきっかけや教育体制についてお伺いしました。
有限会社神馬建設さんについて
1982年に設立した神馬建設は「関わるすべての人々の心と身体を豊かにする」をモットーとして「地域に根ざした「イエ」作り」を行っている建設会社です。
神馬建設では「家」を漢字で表記するのではなく「イエ」と表記するのがこだわり。
というものも神馬社長いわく「家」と漢字にしてしまうと「建物=house」という印象を受けるが、「イエ」とカタカナにすると「ホーム=帰ってくる場所」「居心地のいい場所」という暖かいイメージを湧かせることができるからとのこと。
「帰ってくるためにある場所」だからこそ、「イエ」というカタカナを使っているのだそうです!
意義のある工事を求めて
---本日はよろしくお願いいたします!
さっそくですが、今の工務店を継がれたきっかけを教えてください。
神馬社長
よろしくお願いいたします。
前職でちょっとしたもやもやした経験があって、そんな中先代(父)が建てた「イエ」に住んでるお客様の話を聞いたことが継ぐきっかけでしたね。
前職も実は北海道の建設会社だったんです。すぐに工務店を継がなかったのは工務店というものをよく知らなかったから、継ぐ前に一度外に出てみようってことで、別の会社に就職しました。
そこで東京出張に手を挙げて、東京に10年いくことになったんです。
都会に憧れていたというのもありますね。笑
もやもやとした経験をしたのは、出張の終わりの時期でした。
国道を作る仕事で、こう道なき道に国道を作っていくと、そこに住んでいる人が自分達が使う道じゃないので「なんで作るんだ」って、だいたい反対運動が起こるんです。
「公共工事だから、皆のためになるもの」という大義があるはずなんだけども、視察に来た国土交通省も「どうしてここに道路を作るんだ」って言っちゃうんですよね。
そんなことを言われてしまうと、「お客様や周辺住民にそれなりの大義があって説明をしているのに、何のためにやっているのかよくわかんねぇ。税金使った工事が無駄な公共工事って言われている。いやいや無駄じゃねぇよ。」って言えなくなってしまって。
そんなときに先代である父親が建てた「イエ」に住んでるお客様と話す機会があって、「父さんがやっていることを見ろ、すごいことをやっているんだぞ。こんなウチが欲しいと言ったのにそれ以上のウチ建ててくれるんだぞ。」って言われたんです。
それを聞いて、お客様のリアクションが直に来るほうがずっとやりがいがあるし、意義があると思って、実家の工務店を継ぐのを決意しました。
かえってきたからこそ分かる地域の良さを「イエ」作りに
建設現場からの眺める浦河町
---実際に北海道に帰ってみて、改めて感じたことはありますか?
神馬社長
1度地元を出たからこそ気候や成り立ちなどを知り、その良さを知っているということはアイデンティティとして絶対に負けないんだなって感じましたね。
たとえば地元の木材を使って「イエ」を建てる「地材地建」を行って、山がきれいになるように適度に間伐をする。そしたら土砂くずれも起きないから、河も綺麗になって、さらに海も綺麗になるんですね。実際にえりも町なんか綺麗になった海で海産物をとって、築地に出荷しているんです。
地域の特性を知っていれば今ここに生きている人たち皆への影響を考えられることに気が付いたんですよ。
地域の特性を理解していれば、特性に合わせて「イエ」作りもできますしね。
夜の風は山から吹いてるからからっとしていて、冬の風は海側から風が吹いているからじめっとしている。こういう地域の特性を理解して、自然に逆らわずうまく付き合っていく方が、とっても暮らしやすいんです。
これは北海道の民族であるアイヌの「自然に借りて生きる」という考えから借りている部分もありますね。
地域の工務店を変えるために
---そのような地域に根差した「イエ」作りをするため取り組んでいることはありますか?
神馬社長
リーダーズマップを作成しての「オールトップマネジメント」や教育体制などの組織改革に取り組んでいます。
というのも僕が工務店に戻った時に建築する建物は結構進化はしていたんだけども、大工から社長になる職人社長が多かったから、めっちゃトップダウンで組織的に全然変わっていなかったんです。
そうして一緒に働く中でだんだん見えてきたのは、職人さんが指示されたことしか動かないという状況でした。
それでふと「大工をやったわけでもない自分がトップになった時に、職人さん達が自分の言葉にどう納得して動いてくれるんだろうか。」って考えるようになって、組織改革をしていくと決めたんです。
---具体的にどんな仕組みをされたんですか?
神馬社長
まずそれぞれの能力を「見える化」し「オールトップマネジメント」という形で教育をしやすいような体制を確立しました。
というのも社員それぞれの能力を把握できれば、例えば大まかな作業は「効率的にできる人」にお願いして、細かい作業は「細かいのが得意な人」に任せるという風にすればスムーズに工事を進められると思ったんです。
そこから派生して工事を工程ごとに細分化して「オールトップマネジメント」の体制リーダーズマップを作っていきました。
オールトップマネジメントの体制に向かってリーダーズマップを作成!
---「オールトップマネジメント」や工程の細分化について、もう少し詳細をお伺いできますか。
神馬社長
もちろんです!工事といっても「建築」「土木」「現場管理」など大まかな工程があって、さらに「建築」のなかでも「基礎工事」「外装工事」と細かく分かれているんです。そこから「基礎工事」でも「穴を個々に掘る」「鉄筋を組んでいく」「窓枠を作る」「コンクリを流す」など工事の工程を細分化していきます。
「土工事」「鉄筋工事」などの仕事を細かく細分化!
それで細かく分けた工程ごとに「マスター(現場の責任者)」と「チェッカー(点検者)」そしてその他の社員をチームのような感じでうちの社員全員を当てはめていくんです。
その中の教育体制を確率させるため、「マスター」に「このチームの「チェッカー」から次の「マスター」を2年以内に作ってね。」と伝えています。
「マスター」は「チェッカー」に「もうお前にマスターを渡すんだから。」ていう意識で教えるから「チェックする人」も「マスター」を継ぐ子として教わる姿勢や聞く姿勢を持つことができますし、自分のことを「見返る」ということもできます。こうすることで工務店に根付いたトップダウンの組織体制も改革できると考えています。
---最終的に神馬社長が目指していることはありますか?
神馬社長
まずは神馬建設の中で運用していって修正点などがあれば修正を行って、地元の工務店へ展開していきたいですね。
この体制にすれば会社の中でのキャリアパスがはっきりと見えているから、新しく入ってくる子も入りやすいんじゃないかと思います。入ってきてすぐ何かしらのトップにさせて「次ここの工程行こうか」ということもできるので、このようにして地元の工務店のやり方も一緒に変えていければと思っています。
最後に神馬社長からメッセージです!
工務店の仕事というのはAIにはとって代わられない仕事になります。
ものづくりがすきだったらこの業界にぜひ入ってもらいたいです。
皆さんが想像している大工だけじゃなく、クロスや左官など色んな業種がありますから、ものづくり好きなら一生できる仕事だと思っています。
地方では「仕事がない」のではなく、「職人がいない」になってきています。
「人口の減少」より「職人の減少」の方が早いので、仕事はある状態なんです。
僕達が今取り組んでいる体制が地域内に広がれば地域内の工務店関係全部で同じシステムで動くことになるので、今までいた工務店で評価されたものを持って、別の業種に転職したりということもできますから職人としても、社会人としても成長の場としてピッタリかと思っています。
安定した体制の中で成長し、一緒に神馬建設の体制を地域の工務店に広げてくれる仲間をお待ちしています。